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阿漕は順を追って、ここ数日の事を惟成に話して聞かせます。
典薬助の事を話した時には、温和な惟成が、膝の上で拳を固く握り、眉根をきっと寄せているので、阿漕はその姿に少し見惚れてしまいました。
けれど、典薬助が阿漕と夏月のたくらみで、姫に夜這うどころか、腹を下して便を漏らしてしまった事を話すと。
それまで怒りに震えていた惟成も、思わず吹き出してしまいます。
「じゃあ今頃、袴を一生懸命洗ってるんだろうな」
惟成は想像してどんどん可笑しくなるのか、声を張って笑い始めました。
そんな風に笑い飛ばしてくれて、阿漕も胸がすくような思いが致します。
「けれど姫様は、まだ物置に閉じ込められているんだろう?」
惟成は大笑いしたせいで眦に滲んだ涙をこすりながら、真面目な顔をして阿漕に向き直りました。
「そうそう。それが一番大事なお話なのよ!
姫様はまだ物置の中だけど、明日絶好の機会があるのっ。
こちらの婿君の蔵人の少将が、明日の賀茂祭で舞人として立たれるから、北の方様はそれを見物に行かれるんですって!
きっと威勢を見せつける為に、お邸の殆どの者を引き連れていくはずよ?」
阿漕が顔を明るくさせてそう言うと、惟成もそれは絶好の機会だと、力強く頷きました。
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