第二章

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この時代の結婚というものは、不確かな噂を頼りに相手を見定めていたので、実際に顔を合わせてみると、気が合わない相手のことも多々ございました。 また、家柄や身分のつり合いを考えて、本人のあずかり知らぬ所で縁談が進むことも多く、好きだの嫌いだのという気持ちなど、二の次にされていたのです。 ですが、少将は進歩的な考えを持つ快活な青年でしたので、いずれはそういう形式的な結婚で妥協するにしても、今は心ときめく恋の駆け引きを、楽しみたいと思っていたのでございます。 そういう少将ですから、宮中の女官や貴族に使える女房に、大変人気がございました。 彼女たちは、かしづかれて、わがままに育つことの多い貴族の姫君よりずっと、機知に富み溌剌としておりましたので。 少将はそういった女たちと、遊びの恋の駆け引きを楽しみながら、どこかに運命の女人はいないものかと、ひそかに期待しておりました。 そこに、渡殿(廊下)を渡る足音が聞こえてまいります。 また誰かにうるさいことを言われては敵わないと、音のする方向に視線を送ると、少将はほっと息を吐きました。
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