第六章

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二条邸は、それ程大きくはございませんが、ごてごてと飾り立てた中納言邸に比べ、すっきりと品のよいお邸にございました。 調度品も、一目で上等だと分かるお品ばかりです。 (やっぱり、主の気品が反映されるものよねえ。 派手なお品をごてごてと飾り立てている、どこかのお邸とは格が違うわっ) 今日からここが自分の仕えるお邸だと思うと、阿漕は胸が高鳴ります。 「惟成に言いつけて、掃除や道具の準備をさせたけど、何か足りないものがあったら、好きにしていいからね。 その辺の仕事は、阿漕に任せるよ」 邪魔する者が誰もいないお部屋で、右近の少将は御座(オマシ・敷いた畳)にごろりと横になりながら、阿漕に申しました。 そのくつろいだ様子は、既にお邸の主人のようで、阿漕は少将を頼もしく思います。 「姫も、何か欲しい物があったら、遠慮しないでくださいね。 貴方はもう、このお邸の女主人なのだから」 そう言って右近の少将は落窪姫を引き寄せ、その膝に頭を乗せました。 落窪姫は少将のその仕草に頬を染めますが、少将はその紅い頬に手を伸ばし、下から姫を優しく見つめます。 「もう一度、約束致します」
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