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真剣な眼差しで、右近の少将は口を開きました。
「貴方は、私のただ一人の妻で、ただ一人の恋人です。
これからもずっとずっと、あなた以外の女人に心を奪われることは無いでしょう。
だから、中納言家の人々が、悔しくて眠れないくらい、うんと幸せになりましょうね?」
下から見上げる右近の少将の顔は、いつになく色っぽくて、落窪姫は胸が高鳴って仕方ありません。
けれど、しっかりと頷いて少将の言葉に答えます。
「私、もう既に、うんと幸せでございますよ?
少将様と一緒に居られるだけで、望みはすべて叶いましたもの」
愛する二人の視界からすっかり消えてしまった阿漕は、頬を真っ赤にさせながら、そっとお部屋を後に致しました。
階段を下りると白砂を敷き詰めた坪庭の向こうに、梅と藪椿が花を咲かせております。
それは艶やかな右近の少将と清らかな落窪姫の様で、阿漕はしばらく庭の向こうを見つめておりました。
「阿漕、そんなところで……って、お前何泣いてるんだよっ」
惟成に声を掛けられて、阿漕は自分の頬を濡らす涙に気付きます。
(やだ、私ったら。なんだか嬉しくてほっとして……)
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