第二章

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「なんだ、惟成か」 明らかに安堵の色を滲ませる少将に、惟成は苦笑いしながら近づきます。 「また、奥様やうちの親に、うるさく言われたんですか?」 惟成の母は、少将の乳母をしておりますので、二人は乳兄弟にございます。 惟成はこうして度々右近の少将の邸に、出入りしておりました。 ですが今日は、阿漕の為に一肌脱ぐという大役がございますので。 なるべく少将の気を緩めるために、惟成は少将に同情するように顔をしかめます。 「ああ。 毎日毎日、結婚、結婚。そればかりさ。 お前がうらやましいよ。 自分の目で見初めた女と、一緒になれたんだから」 「それが、若様。 今日は若様にも良いお話を持ってきたんですよ」 惟成は阿漕に聞いた落窪姫の外見や内面の美しさについて、とくとくと語りました。
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