第六章

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其の四 二条邸が幸せに溢れている頃、中納言家の人々は祭り見物を終え、上機嫌でお邸に戻って参りました。 けれど、どうでしょう。 落窪姫を閉じ込めていたはずの北の物置が、無残に壊され、閉めていたはずの戸が、打ち立てごと放り出されているのです。 その様子を見た源中納言は、顔を真っ赤にさせて大声で怒鳴りながら、お邸中を歩き回ります。 「一体何があったというのだ! どうして物置が壊されておるのだ!」 お邸の要ともいえる寝殿に向かうと、そこはひっそりと静まり返り、周囲に人の気配もございません。 「この邸には、まともに留守居の出来る者はおらんのかっ。 残った者はどこにおるっ。 何故こんな邸の奥まで入り込まれて、誰も気付かなかったのだっ!」 中納言は声を張り上げて怒っておりますが、普段北の方にこき使われている留守居の家人たちは、皆鬼の居ぬ間にと、自分の部屋でくつろいでいたのです。 北の方は、これはあの阿漕の仕業に違いないと、阿漕の部屋と落窪姫の部屋に足早に向かいました。 すると、部屋はすっかりもぬけの殻で、少しだけ残っていた調度品もそっくり無くなっているのです。
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