第二章

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この時の少将は、阿漕の望む一途な夫というよりは、恋の駆け引きを楽しむ気軽な気持ちで、落窪姫のことを考えておりました。 「なるほど。それはお可哀想な姫君だね。ぜひお会いして慰めて差し上げたいものだ。 惟成、お前の妻がその姫に仕えているんだろう? それなら私をその姫のところへ、こっそり手引きしてくれよ」 少将はすっかりその気になって、惟成に申しました。 ですが惟成は、その言葉にぎょっとします。 と、申しますのも。 日の昇る少し前、阿漕の部屋を去ろうとした惟成に、昨晩の甘やかな時間の名残を微塵も見せない厳しい面持ちで、阿漕がよく言い含めていたのでございます。 「惟成さん。 姫様に紹介してくださるお方のことですけど。 これだけは忘れないで欲しいの! 姫様にはぜひ、一途に恋を貫いて下さる貴方のような誠実な殿方と、ご結婚してほしいの。 浮気な心で一度、二度の遊びの恋をしたいというお方は、お断りですからね!」
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