第二章

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其の弐 「阿漕、この間話した姫様の婿君の事だけど……」 惟成は阿漕の顔色を窺うように申しました。 一方の阿漕は、内心うれしい気持ちもしたのですが、ここで飛びついては少しはしたないし、落窪姫を安く思われてしまうと、わざと顔をしかめて答えます。 「まあ、困ったわ。 姫様にはまだ、きちんとお話していないのよ」 実際、阿漕が落窪姫と親しくしていると、このお邸の北の方にやかましく言われてしまうので、なかなかゆっくり話す時間も取れないのです。 「そんなことを言わず、姫様にこれをお渡ししておくれよ。 これは、今をときめく右近の少将様からの文なんだぞ?」 (あら、右近の少将様って……) 阿漕も貴族仕えの女房ですので、他の女房達の噂を耳にしておりました。 (確か、とてもお美しい殿方で、こちらの三の君様の婿君、蔵人の少将様より将来の明るい方だったわよね)
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