第二章

10/25
前へ
/378ページ
次へ
中納言家の姫君は、大君(長女)・中君(次女)・三の君と、すでに婿どりをしておりますが。 中でも出世頭の三の君の婿君である蔵人の少将は、下にも置かない歓待ぶりで、北の方の自慢の種でございました。 その蔵人の少将よりも立派な殿方を、落窪姫の夫にできるかもしれないと思うと、阿漕はわくわくしてしまいます。 (もしこのお話がうまくいったら、あの底意地の悪い北の方様の鼻をあかすことができるじゃない。 お手柄よ、惟成さんっ) 心の中ではこのように大喜びの阿漕でしたが、あまり喜んでこのお話に飛びつくと、落窪姫の価値を下げてしまいます。 少しつれない態度をとって、相手に気持ちを募らせるのも、この時代の大切な恋の駆け引きなのでした。 「右近の少将様は、大変色好みの方だと噂に聞いてるけど、本当に姫様を大事にしてくださるのかしら。 まあ、姫様のお耳にはそれとなく入れておきますわ」 そういって惟成から受け取ったお文は、綺麗な浅緑の薄様で、そんなしゃれたお文の橋渡しをできることを、阿漕はうれしく思ったのでございます。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

860人が本棚に入れています
本棚に追加