第二章

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その言葉に、落窪姫は目を丸くします。 「このように、すでにお文もお預かりしておりますわ」 そう言って差し出された薄様は、綺麗な浅緑色をしております。 ですか落窪姫は、自分に文をよこしてくるような殿方がいることを、信じることができません。 「そんな、何かの間違いじゃないかしら。私をお求めだなんて……。 それは、四の君へのお手紙じゃないの?」 「いいえ、これは紛れもなく、姫様へ認められたお手紙でございます。 それもお相手は、今をときめく花の公達。右近の少将様にございますよ? さあ、中身を拝見いたしましょうよっ」 阿漕は頬を紅く染めて、落窪姫の方へ膝を進めました。 ゆっくりと開いた薄様に 『君ありときくに心をつくばねの 見ねど恋しきなげきをぞする』 ※美しい姫だというあなたの噂を耳にして、まだお会いしたこともないのに、愛しさが募ってせつなく嘆いております。
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