第一章

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この落窪姫。 父は中納言である源忠頼。 母は、宮家の姫でございます。 本来ならば、このような粗末な部屋に押し込められるような身分ではなく、貴き血筋の姫君なのですが。 落窪姫は幼い頃に母を亡くし、父である源中納言のお邸に引き取られました。 ですが、それを快く思わない人物が一人。源中納言の北の方にございます。 そもそも自分の腹を痛めて生んだわけでもない継子。さらには、一時でも夫の愛を奪った女の子供とあっては、北の方も落窪姫を大切にしようとは思えません。 また、落窪姫の血筋が貴いことも、北の方の癪に障るのでした。 北の方には四人の姫君がおりましたが、その姫君の誰よりも、落窪姫は美しく賢しい姫君でありましたので、北の方はますます落窪姫を憎らしく思います。 そうして、小さな床の落ち窪んだ部屋を与え、姫を落窪姫と綽名して、針子のように縫物ばかりをさせているのです。 父である中納言は、悪い人では無いのですが、この北の方の尻に敷かれて、あまり口を出しません。 異母姉妹である姫君たちに至っては、興味がないのか、落窪姫を居ないもののように扱っておりました。
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