第二章

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一人になった部屋で、落窪姫はもう一度文に目を落とします。 離れた部屋でさびしく暮らす姫は、あまり男女のことに詳しくありません。 ですが、阿漕から聞く話や、このお邸での婿君の扱いを見て、なんとなく結婚というものがどういうものなのか、察せられます。 貴族の結婚は、家柄や身分が釣り合わないとなりません。それに、婿君は妻の家に、財力も望むでしょう。 ですが落窪姫の身分は、あってないようなもの。そして、この家の財を落窪姫の為に使うのを、北の方が許すはずもありません。 (私は縫物は得意だけれど、私の自由にできる衣装など、一つもないもの) 隣に畳まれた、煌びやかな衣装に目をやって、姫は切なく息を吐きました。 (お父様も、四の君のご結婚が済めば、私のことを考えて下さると仰ってはいたけど……) それがどれほどアテにできる言葉だというのでしょう、と。落窪姫はもう一度ため息をつきます。
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