第二章

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少将は、今のところ遊びの心がうずいて、何としても姫を一目見てみたいという気持ちでいっぱいのようです。 そんな心持ならば、阿漕は絶対に落窪姫との取次はしないだろうと、惟成は心得ております。 ですが、すっかり乗り気の少将に押されて、そのあとも二度、三度と、恋文を阿漕に届けたのでございます。 それでも一向に返事はありません。 (最初は私を焦らす駆け引きかとも思ったけど、こうもなしのつぶてとは、どういうことなんだろうか) 流石に少将も訝って、惟成に詰め寄ります。 「おい、惟成。 お前、ちゃんと私の書いた手紙を、姫様に渡しているんだろうな?」 何時もは快活な少将も、見るからに不機嫌な様子でございます。 それもそのはず。 この時代の男女の恋というのは、文のやり取りにより発展していくのモノ。 何度もお文を頂いて、まったく返事をしないというのは、大変失礼なことだったのです。
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