第二章

21/25
前へ
/378ページ
次へ
少将にとっての恋は、手順の分かった者同士が押したり引いたりを繰り返す、決まりのある遊戯のようなものでした。 その遊びの恋から少将が学んだことの一つには、女の狡さがございます。 それを持っている女ほど、恋の調子を自分に合わせるのが上手いのです。 少将はその狡さを嫌いではありませんが、やはり自分の妻にそれを望もうとは思っておりませんでした。 ですが、惟成から聞いた落窪姫の内面は、そういった狡さとは無縁のように思えます。 これは、駆け引きになれた少将には、大変新鮮なことでございました。 (きっと私のことを継母に知られたら…と。肩を震わせているに違いない) さらには、落窪姫が自分の為に、か細い思いをしているかもしれないということが、妙に男心をくすぐります。 少将はやはりひと目だけでも落窪姫に会いたくて、その日も惟成に手引きの催促をするのですが。 惟成は阿漕によーく言い含められているので、一向に首を縦には振りませんでした。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

860人が本棚に入れています
本棚に追加