第二章

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一方中納言家では、少将からの文がここ十日ほど途絶えていることに、阿漕が焦りを募らせます。 (困ったわ。程よくつれなくするのなら、それも恋の駆け引きと言えるけれど。 一度もお返事を差し上げていないとなると、右近の少将様も、ついに愛想を尽かしてしまわれたのかしら) 阿漕が落窪姫に返事を書くように進めても、姫はいつも首を横に振るばかり。 姫にしてみれば、初めからあきらめていれば、それ以上につらい思いはしなくて済むと、お返事を書く気など起こらないのです。 (なんとか姫様にその気になっていただかないと……。 せっかくのお話が、流れてしまうわ) ため息をつきかけた阿漕に、うれしい姿が映ります。 「惟成さん、その手に持っているのもしかしてっ」 「ああ。若様からのお手紙だよ。 でも、今日は何としても返事を頂かないことには、俺は若様に合わせる顔がないよ」 「そうよねぇ……。それは私も心得ているんだけど、姫様はお返事の仕方も分からないと、仰るばかりで」
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