第二章

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その日少将が認めた文には、返事をもらえない辛さを詠った歌と、それでも落窪姫をあきらめられそうにないという、少将の胸の内が綴られていたのです。 ですから惟成は、今日こそは必ず返事をもらってくるように、と。少将からきつく言われておりました。 すがる思いで阿漕に文を渡す惟成。 流石に今日こそはお返事をと思う阿漕。 二人は互いの主人を思って、大きく息を吐いたのでございます。 とりあえず、落窪姫に文を見せようと、阿漕はお部屋を訪れます。 ですが、落窪姫はいつにも増して忙しそうに縫物をしているのです。 「姫様。右近の少将様が、またお手紙を下さいましたよ? なんでも少将様は、姫様からのお返事を心待ちにしていらっしゃるそうですわ」 阿漕がそうやって文を見せても、落窪姫は針を動かす手を止めようとはいたしません。 「ごめんなさいね、阿漕。 北の方様に急な縫物を言いつけられて、私それどころではないの」
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