第二章

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なんでも、中の君の婿君が急に宮廷に出仕することになり、そのための袍(ホウ・決められた仕事用の装束)を縫わされていて、手を止める暇も無いというのです。 今回ばかりはお返事を…と思う阿漕ですが、北の方の言いつけに背けば、どんな誹りを受けるか分かりません。 それを聞いた惟成も、今回ばかりは本当に参ったと、頭を悩ませます。 しぶしぶ返事がもらえなかったことを少将に伝えると、少将はがっかりするのと同時に、やはりどうしても落窪姫に会いたいと、気持ちが強くなるばかりです。 「このままお返事がもらえないのでは、もうどうしようも無いじゃないか。 お前の妻がなんと思っているのか知らないが、文のやり取りもままならないようでは、直接会って、姫のお気持ちを確かめるより他はないだろう? いいか、惟成。今度ばかりは嫌とは言わせないよ? 時期を見て、私を姫のところへ手引きしなさい。いいね?」 目を細めて睨みつけるように話す少将に、惟成も今度ばかりは首を縦に振りました。
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