第三章

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その言葉に、北の方はこれ以上ないくらい、眉を吊り上げます。 「お前はいったい何を言ってるの! 落窪なんか連れて行って、なんの役に立つんだい? 参拝するのに、針子なんか必要ないじゃないか。 それに、外を出歩く癖などつけさせたら、あの子の為にならないんだよ。 どうせ一生このお邸の中で、細々暮らすんだ。 分かったらとっとと、支度をおし! 今度無駄口叩いたら、お前も伴から外してやるからね」 あまりの剣幕に、その女房は身を縮ませて北の方から離れました。 (相変わらず、なんて仰りようかしら。 いつも忙しく縫物ばかりをしている姫様にこそ、気晴らしが必要でいらっしゃるのに。 姫様がいかないのなら、私だって行きたくないわ。 邪魔する人のいないお邸で、姫様とゆっくりできる折角の機会ですもの) 阿漕はなるべく平静を装って、北の方に申します。 「あらまあ、残念なことでございます。 私、月のさわりになってしまいましたので、お伴に加わることができません」
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