第三章

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それでも神仏のバチが、他の皆様にも及ばないよう、泣く泣く辞退したのです、と。阿漕はいけしゃあしゃあと言ってのけました。 そこまで言われると、北の方も信じざるを得ません。 「そうかい。それなら、仕方がないね。 じゃあ、お前はしっかり留守を守っておくれ」 こうして北の方をまんまとだまし、最後まで残念そうな顔を取り繕って、阿漕は仰々しい参拝行列を見送ったのでございます。 皆が出立した後のお邸は静まり返って、少し心細い気もしましたが、阿漕は早速落窪姫の部屋に赴いて、しんみりと語り合いました。 普段は縫物に大忙しの姫も、今日ばかりはくつろいでいる様子です。 そこへ、阿漕の夫の惟成が、文を寄越してきたのです。 『せっかくの石山詣でに加わらなかったのは、俺のためかな? だったらこれからすぐに行くから、待っててくれよ』 そんな可愛らしいことが書いてあって、阿漕は頬を緩ませます。
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