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いっぽう、そんな返事を受け取った惟成は、首を捻ります。
わざわざ落窪姫が居残っていることや、少将の絵を持ってくるように、などと。やけに意味深だと、惟成は思いました。
(これは、若様に忍んで来て欲しいという、標なんだろうか?
でも阿漕がそんなことを言うとも思えないけど)
とりあえず右近の少将にお伺いを立てようと、惟成は阿漕の文を少将に見せました。
「へえ、これがお前の妻の手蹟か。なかなか美しい文字を書くんだね。
それに――これはいい機会じゃないか。丁度いい。
惟成、すぐに妻のところへ行って、私が忍び込めるよう手配しろ」
「それでは、何か絵巻物を一巻お貸しください。
それで妻の様子を見て参ります」
「絵巻物、か。それなら私の文を姫に届けておくれ」
少将はそう言って、白い紙に小指を咥えてすねた表情の男の絵を、さらさらと描きました。
そして
『つれなきを憂しと思へる人はよに 笑みせじとこそ思ひ顔なれ』
と、書き添えます。
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