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それは、落窪姫の心を解くように機転を利かせた、右近の少将のしゃれっ気でございました。
『絵をご所望のようですので、これを差し上げます。
つれない仕打ちをつらいと思っている私は、この絵のように、笑みは見せない。つまり、絵は見せないと、いじけてすねているのですよ。
子供っぽい真似だと、お笑いになりますか』
そのように書かれた文を、今回はうまくことが運びそうだと、惟成は懐に忍ばせて阿漕の元に急ぎます。
ですが、どうやら絵巻物らしきものを持たない惟成に、阿漕はつれなく申しました。
「あら、惟成さん。
お約束の絵巻物はどこなの?」
「絵よりも若様のこの文を姫様にお渡ししておくれよ。
今日はもしかするとと思って、綺麗なお菓子もたくさん持ってきたんだぞ。
どうかな、姫様は。今日こそ、そろそろ若様と……」
約束の絵を持たない惟成に、阿漕はつんとした態度で返します。
「何を言ってるの?
とりあえず、このお文を姫様にお見せしてくるわ。
惟成さんは、私の部屋で待っていてね」
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