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「どうでしたか?
もし期待外れでお帰りになるというのなら、お送りしますよ?」
簀子縁に控えていた惟成は、少将に耳打ちします。
「期待外れなものか。
お前は妻に恨まれたくなくて、そんなことを言うんだろう?
いいから姫がお一人になるように、早く妻を呼び出してさっさと寝てしまえ」
右近の少将の気持ちはもう固く決まっているようで、そうなると主人である少将の言葉に、惟成は従うほかありません。
惟成は覚悟を決めて、少将のいる場所とは反対側のお部屋の引き戸から、阿漕を呼びました
「今夜は姫様の側に居たいの。
貴方は自分の仕事でもしていて頂戴」
阿漕は引き戸も開けずに冷たく言いましたが、惟成もあきらめるわけにはいきません。
「さっき帰った友人が、いいことを教えてくれたんだ。それを教えてやりたいから、少しだけでも出てこいよ」
「もうっ。しつこいわねえ。あっ――」
惟成はしぶしぶ出てきた阿漕の手を引いて、さっと胸に捕まえてしまいました。
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