第三章

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一方のお部屋では、一晩中泣いたり恨み言を言ったりする阿漕を、惟成が一生懸命なだめておりました。 「参ったなぁ。 いったい何時になったら機嫌を直してくれるんだよ」 「もう貴方なんか大嫌いよ。 姫様がどんなに心細い夜をお過ごしになったかと思うと……。 いままで私のことを、たった一人の味方だと信じて下さっていたのに。 きっと私も貴方たちとグルだと思われたに違いないわ。もう、姫様に合わせる顔もなけりゃ、惟成さんのお顔だって、もう見たくもない気持ちよ」 阿漕は惟成に背を向けて、袖で自分の顔を隠してしまいます。 「そんなこと言ってないでさ。 ほら、もうすぐ夜が明けるよ?  姫様の御前に伺って、若様に迎えの車が来たと伝えておくれよ」 牛車の音を聞きつけた惟成は阿漕にそう頼むのですが、阿漕はいやいやと首を振りました。 「そんなことをしたら、私が昨夜のことをはなから承知していたと、姫様に言うようなものじゃない。 惟成さんは、私が姫様に嫌われてもいいの?」 しっかり者の阿漕にしては、子供っぽい言いようです。
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