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「私は、あくまでも姫様の女房にございます!
いくら北の方様が三の君様に仕えよと仰っても、姫様を蔑にできるはずがございません!」
阿漕はいささか気の強い所もございましたが、すっきりとした顔立ちの、なかなか美しい女子にございました。
それに加えて、働き者でよく気の付く、優秀な女房だったので。
「お前は落窪なんかの世話よりも、私のかわいい三の君のお世話をなさい。
こちらは蔵人の少将を婿どりして、何かと人手が必要なんだから」
北の方にそう命じられて、嫌々三の君の世話をしているのです。
それなのに落窪姫は、
「でも、あちらのお世話をするようになってから、阿漕が身ぎれいになって、私もうれしいわ。
私にはそんな綺麗なお衣裳を、準備できないもの。
それに、三の君に仕えているから、いい人にも出会えたのでしょう?
阿漕は北の方様に、感謝しなくちゃ」
このように、どこまでも裏心のない優しい言葉を、阿漕にかけるのです。
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