第三章

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そうは思っても、お文を落窪姫に見せないわけには参りません。 阿漕は重い腰を上げて、落窪姫のお部屋に向かいました。 今度はお部屋の前で声をかけます。けれど、落窪姫からの返事はありません。 (やっぱり私の顔なんか、見たくもないとお思いなのかしら) 阿漕は泣きたいのを堪えて、背筋を伸ばしてお部屋の引き戸を開けました。 「あの、姫様。右近の少将様からお文が来ております」 気丈な様子を振る舞って阿漕は申しましたが、落窪姫は臥せったままで、お顔さえ見せてくれません。 「姫様は、私をお疑いですか? 私、本当に何も知らなかったんです。こんなことを申し上げても、信じて頂けないかもしれませんが、本当に寝ている間に起こってしまった事なんです」 阿漕が少し膝を進めて熱心に言う言葉にも、落窪姫の返事はございません。 「もし知っていたなら、私きっと姫様にお知らせするなり、お守りするなり、致しましたわ」 そうして詰め寄っても返事がもらえないので、阿漕の心は挫けそうになりました。
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