第三章

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その文に目を通すと、阿漕は涙が出そうになりました。 (叔母様、本当にありがとう) ですが、うれしさに浸っている暇など、ありません。 阿漕は几帳や夜具を整えて、右近の少将を迎える準備を致しました。 全ての準備が整って、落窪姫は綺麗な衣装に身を包み、良い香りに包まれて、今日は身を隠す几帳もございます。 (これよこれ。 こんな風にきちんと準備を整えた上で、少将様をお迎えしたかったのよ! 初日はつまずいてしまったけど、これなら姫様も……) 阿漕が視線を送ると、落窪姫はゆったりとした様子でお部屋の様子を眺めておりました。 そしてゆっくりと移る視線が、阿漕の視線と空でつながった時、とても優美な微笑みを浮かべたのでございます。 そこには自分への感謝の気持ちが溢れていて、阿漕はやっと息をつきました。 そして頃よく訪れた右近の少将を、阿漕は晴れがましい気分で案内したのでございます。
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