第三章

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少将がお部屋に入ってくると、落窪姫は伏せていた体を起こそうと致しました。 「ああ、そのままでいいですよ。 貴方は今日、気分が悪くて伏せていると聞きました。 無理はいけませんよ?」 少将はそう言って、姫に寄り添うように横になります。 昨日と違って部屋は綺麗に清められ、几帳や調度品などが飾られて、華やかな気配を与えておりました。 「私の差し上げた衣を身に着けて下さったのですね」 今日は袴も緋色の鮮やかなものをつけている姫を見て、少将は微笑みました。 (今日は姫も、ずいぶんと落ち着いていらっしゃる。 きっと惟成の妻が、一生懸命今夜の準備をしてくれたんだろうな) 自分を案内する際、うきうきと軽い足取りだった阿漕を思い出し、少将は心が温かくなりました。 一方、落窪姫も、昨夜とは違って、お部屋も衣装も整えられているので、頑なだった心が解けていくのを感じます。 少将が肘立てて顎を置いていた手を、姫の頭の下に差し入れると、素直にそれに従いました。
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