第三章

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もちろん少将も、明るい部屋で落窪姫を見たかったので、阿漕の独り言に答えます。 格子が上がると、明るい光に照らされた落窪姫がそこに居て、少将は改めて姫の美しさに胸を突かれました。 (こうして日の光の下で見ると、お歳相応の可愛らしさも感じられて、本当に愛くるしい) そうして少将が姫を眺めている所へ、女の童の露が、美しく盛り付けられた朝の膳を持って参りました。 その後ろから、阿漕が手水のたらいを持ってやって来ます。 それには落窪姫も少将も驚きを隠せません。 (いつの間にこんな準備をしてくれたのかしら) 姫が阿漕の方に視線をやると、阿漕は片目を瞑り、嬉しそうに微笑んで見せました。 (本当にありがとう、阿漕) 落窪姫も心の中で手を合わせながら、阿漕に微笑み返したのでございます。 右近の少将もその様子に気づいて、とても嬉しくなりました。 そして、姉妹のように思いあっているこの二人を、何とか幸せにしてやりたいと、思ったのです。 程なく自分の邸に戻る時。 右近の少将は落窪姫を振り返りながら、姫と生涯を添い遂げる決心をしたのでございました。
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