第三章

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きっと叔母は不審に思うだろうなと思いながら、阿漕は文を使いの者に持たせました。 その時丁度、右近の少将から落窪姫へお文が届きます。 昨日までは筆を取ろうとしなかった姫が、嬉しそうにお文を眺めて、お返事もすぐに書いたのです。 その様子をみると、阿漕は嬉しくて仕方がありません。 そして同時に、なんとかして今日も立派にお勤めをやり遂げて見せる、と。決意を新たにしたのです。 それから程なく、阿漕の叔母から、頼んだお品が次々に届けられました。 添えられた文には、阿漕の頼みであるならば、お安い御用だと、頼もしい言葉が書かれております。 届いた御餅も、草餅が二種類、普通の白餅も二種類、小さな形に整えられており。 たらいや湯差しなどの道具も、見事なお品ばかりでございました。 それを綺麗に盛り付けて、二人の前に差し出す時のことを思うとうきうきして、阿漕は疲れも忘れて働きました。 暗くなるころには何もかもすっかり支度が整い、阿漕も衣装を綺麗に整えたのですが、夕方から降り出した雨が、その勢いを増しているようです。 軒先に顔を出すことも出来ない大雨に、阿漕は少し不安になりました。
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