第一章

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其の弐 阿漕は自分の局に戻りながら、さてどうしたものかと頭を悩ませます。 落窪姫を幸せにして差し上げるには、この中納言邸を出ていくより、道はございません。 ですが、姫には他に身寄りも無いので、やはりどなたかよい殿方と結婚して、その方と一緒に暮らして頂くのがいちばんです。 (そうは言っても、女の身で大した伝手もないのに、どうやって良い殿方を見つければよいのかしら……) このお邸でどんなにみすぼらしい生活をしていても、落窪姫は血筋の貴い貴族の姫です。 おいそれと、その辺の男にくれてやるわけには参りません。 (そうだわ。ここはひとつ、惟成さんの前で一芝居打ってみようかしら) 阿漕の頭には、自分に惚れぬいた気のいい夫。惟成の顔が浮かんでまいりました。 惟成は自分と違って色んなお邸に出入りしているので、どなたかよい殿方を知っているかもしれない、と。阿漕は頬を緩ませました。
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