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『どうして来られないのよ。
雨がどんなに降っても会いに行くって、昔のお歌にもあるじゃない。
こういう困難のある日にこそ、駆けつけてくれるのが、愛情の示し方ってもんでしょう?
騙し討ちのように姫様に夜這いしたくせに、少将様は情け知らずなお方だわ。
それに惟成さん。あなたもどんなつもりで一人だけ来るなんて言うの?
姫様につらい思いをさせて、のこのこ顔を出すなんて、信じられないわ。
こちらがこんな思いでお待ちしてるのに、少将様は来ないってわけよね。ふんっ!』
せっかくきれいな衣装に身を包み、お化粧も施しているのに、今の阿漕は鬼のような顔をしております。
一方落窪姫も、少将が来られないことを大変悲しく思い。
『生きるかいも無く悲しい身の上の私ですが、貴方様のおいでが無い今宵、袖を涙で濡らしております』
という、いじらしい意味の歌を一首だけ、お返事いたしました。
その文を見た右近の少将は、姫に会いたい気持ちをますます募らせます。
ですが、雨の勢いが収まることはなく、少将は姫からの文を胸に抱いて、深くため息をつきました。
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