第三章

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仕方がないので、脇息に寄りかかり物思いに耽る少将の目に、身を竦めて青い顔をした惟成が映ります。 「どうした、惟成。お前震えてるんじゃないのか?」 そう言って身を起こして、惟成の手にした文を覗きこみます。 「ははーん。お前の妻も、相当拗ねている様だね。 そういえば、今日は結婚三日目の夜か。 昨夜も今朝も、ずいぶんと頑張って色々準備してくれたからなぁ…… 本当に、私にもどうしようも無いことだけど、可哀想なことをしたね」 少将がもう一度深くため息を吐くと同時に、惟成はすくっと立ち上がりました。 「若様、俺、今からひとっ走り行って、阿漕をなぐさめてきます。 それから、若様の愛情の深さを、とくとくと語ってやりますよ!」 惟成は昨夜の阿漕を思い出して、ぐっと拳を握ります。 (部屋に戻って横になるなり、すぐに寝息を立てて眠りだしたくらいだ。 きっと一日中、走り回って色々準備をしたのに違いない。 さっきの手紙の様子だと、きっと今日も三日目の大事な夜の準備を、大急ぎでしたんだろう……)
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