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靴を脱いで部屋に上がると、入口の近くにトイレと洗面所があって、その先に和室が広がっていた。 低めのテーブルと座椅子が人数分。テレビと床の間に、小さな収納スペースもあった。 あの中は金庫だろうか、そして床の間にかけてある掛け軸の裏には何かお札が貼ってあったりしないだろうか。 そんな風な事を呟きながら兄さんがそわそわしている。 その先には広縁があって庭の木々が見える。 和室には左右それぞれに引き戸のドアがあった。 どちらも寝室へと続いているらしい。 その両方を開け、「さあどっちがいい?」と兄さんに尋ねられる。 片側はベッドのある洋室。 もう片方はこれから布団がしかれるであろう和室。 「……あっち」 「もちろん和室だよね」 指さし即答する俺と、それに同意する礼二君。 「えー、ベッド慣れてるしこっちもよくないか?」 来いよ、とベッドの端に座り俺へと手招きしてくる兄さん。 ふざけて言っているのはその顔を見ればわかる。 しかし対応に困った俺はただ突っ立っているだけだ。 そこで礼二君が結菜さんの背中を軽く押し、兄さんの腕の中へとダイブさせた。 多少バランスを崩すも、広いベッドは弾力性があるらしくふかふかと2人を受け止めている。 きゃっきゃうふふと、とても楽しそうだ。 そう、これが正しいこの寝室の使われ方。 新婚さんにこそふさわしいだろう。 何故ならダブルベッドなのだから。 奥を覗いて見たらクローゼットに鏡台等の家具の他に、サブ的なシングルベッドと、さらにソファーベッドらしき物も見て取れ、一体この部屋は何人向けなんだろうと、今更ながらに部屋の広さを考えた。 残る和室の方も広いみたいだけれど、長期休暇を外した今はオフシーズンらしく、広い部屋でも比較的安い事に安堵した。 俺のわがままのせいで余計に出費はさせたくな……いやでも俺も一緒にというのは兄さんのわがままだ。あんまり気にしない事にしよう。 「あっちも見ようか」 礼二君に促され、和室の方へと向かった。 兄夫婦も起き上がってついてくる。プチ探検みたいな感じで楽しいらしい。 それがよく伝わってくる顔をしている。
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