プロローグ

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小さい頃、俺は兄の後ろを追いかけていた。 7歳年の離れた兄は、昔は優しかった。 その頃は当然兄の事が好きで、それはまだ両親に対するものと同じだったと思う。 兄が成長すると、次第に俺を鬱陶しがった。 それでも俺は兄の後を追った。 その頃どうだったのかは、今はもうわからない。 家族に持つべきものと違う。 そう気が付いたのは、俺が中学に上がった頃だ。 その頃初めて、俺は女の子に告白された。 戸惑いで長期間答えを出せない俺に、彼女はこう言った。 「じゃあ、どこかに遊びに行くとして、隣にいて欲しいって、そしたら楽しいだろうなって思える人は?」 その後に続けられた、 その相手を浮かべて、それを私とすり替えて、そしたらどうなるかな。少しは楽しいと思えないかな?と、 正確にはそんな事を言っていたと知ったのは、その日の放課後、友人に聞いてからだった。 聞いたままの事が頭に入らなかった理由。 それは、俺が放心していたせいだ。 彼女の言うとおりに思い浮かべたのは、 最近はまた仲良く戻ってきた実の兄その人だったから。 さらに彼女の続ける言葉の断片だけが頭の中に入ってきていた。 手を繋ぐ。 キス。 中学生らしくそこで終わっていたからまだ救いはあったけれど、浮かべてしまった。 想像してしまった。 そしてその妄想に、嫌悪感を抱く事も、 ありえねー、それは種類が違うだろと笑える事も無く、気が付いてしまった。 俺は、兄さんの事が好きなんだ。
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