プロローグ

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それからの日々を、天国と取るか地獄と取るか。 きっとどっちにもすぐに向かえる紙一重。 今にも反抗期に突入しそうな俺を、兄は構いまくってきていたからだ。 気づいてしまったからにはもう止まらない。戻らない。 この気持ちをどうすればうまく隠せるのか。 その事だけに重点を置いた俺の生活は、ただ1つの行動に走った。 そうだ、逃げればいいんだ。 なるべく遅くまで友達と遊ぶ。 そして帰宅したら即自分の部屋へ。 晩御飯だと呼ばれるまでずっと鍵をかけて引きこもる。 可愛くねえ!と時々嘆く兄の声は無視した。 いやいや、俺が可愛くてどうする気だ、兄よ。 まさか、もし、なんてそんな希望はありえなさすぎて、持ってもすぐに消え去った。 何故なら兄には彼女がいたからだ。 俺の部屋に向けて声をかけた直後に、彼女に向けて甘い言葉を囁く。 その後の事も全部、薄い壁を挟んだだけじゃ筒抜けだった。 この思いは報われないんだ。 知ってるから、もういっそ、笑いかけないでくれよ。
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