一竜一猪

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「ゴメン。顔に出てた?」 『ああ、しっかりな。まだ寝るのか?』 ナギは怠そうに上半身を起こすと、軽く背伸びをする。 「起きるよ。オッチャン暇そうだし。死んだら寝なくていいの?」 『わかんねぇな。俺も死んでから意識があるのは昨日からだからな。寝る奴は寝るんじゃねぇか?』 「昨日から?じゃ悔いが残ってたわけじゃないんだ。」 『………………たぶんな。』 少し考える素振りを見せるオッチャンを尻目にナギはオッチャン用にテレビを付け、煙草に火を着ける。 それを横目で見てオッチャンはナギと同じ仕草をする。煙草を吸う真似をしているようだ。 その姿がなんだか可愛いらしくみえる。 『生きている奴らが羨ましいとは思わない。が、俺もどうせこの世にいるなら一服ぐらいさせて欲しいぜ。』 「そっか………。でも身体に悪いから吸わない方が健康でいいよ。」 『お前わかって言ってるだろ?死んでる奴に言っても無駄だって。』 ナギは薄笑いを浮かべ、両手を合わせ謝罪の仕草をした。 そのはにかんだ顔は若者ならではのイタズラ顔。 坂倉凪斗は現在21歳。市内の大学に通う学生だ。
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