行雲流水

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         【一】 「…………………。」 時刻は午後6時。 ヒロヒトは学校の最寄り駅のベンチに座っていた。 講義が5時過ぎに終わり、約1時間程この場所に腰掛けている。 ナギとこの場所から見える赤レンガの建物[ジョーカー]に行ってから1週間後の事。 今日はバイクで来ていたが、3時頃から降り出した小降りの雨が止むのを待っていたら本降りになってしまった。 通りがかる同じ大学の女生徒達が何人もヒロヒトに視線を向ける中、曇り空だけを見上げている。 ナギなんかは知っているのだが、ヒロヒトは異性からかなりの人気があった。 容姿に加え、その冷めた態度が大人になり始めた女の子達には魅力的に映る。 同じ年代でありながら、大人の男性を意識させる。 その点は本人もわかっていた。 というよりもその異性からの視線に慣れてしまっていたのだ。 バレンタイン等のイベントにも、名前も顔も知らない女性から何度も告白された。 高校生の時なんかには女教師から告白され、付き合っていた事もある。
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