行雲流水

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新しい素数を発見する為の打牌。 そう考えるヒロヒトは次の対局が楽しみになっていた。 (坂倉さんに影響されてしまったかな……。こんなに麻雀を打ちたくなるなんて。 麻雀の魅力を新しく見つけた気がするな……、効率だけじゃない。 選択も鳴き一つで全く違って来る。 それを導き出す勘もいわば知力……。 これが無ければ何も変わらない……。) 車が行き交う車道は水溜まりが出来ていて、車が通る度に水飛沫が飛びかっている。 駅前の排水溝からは水勢の勢いが音でヒロヒトの耳に伝って来る。 あれだけ降り削いでいた雨はいつのまにかすっかり上がっていたのだ………。 対局に集中し、雨の事など忘れてしまっていた………。 (田邑君に止水はやめてって言わないとな……。) 水や河は流れている……。蒸発したり、下流へと動いたり。水源は不明でもその形は様々に変わって行く………。 帰り道。湿った空気の中歩くヒロヒトは気付いていない。 その眼差しがナギ達と同じになっていた事に………。
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