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「黒竹箒について、悟君はどれくらい知っているの?」
「篠原の報告書待ちだったから、とりあえず危ないものとしか・・」
不安に染まった悟の目が説明を求めるように拓郎に向けられる。
拓郎はそれを安心させるようなニコニコ笑顔で、さらりと説明してやった。
「暴走中の黒竹箒の影響を受けた人はたいてい二タイプの状態に陥ると言われている。一つ目は負の感情を周りに向けて、周りを傷つけるタイプ。二つ目は負の感情を自分の中だけで増幅させて、自分を追い詰めていくタイプ。
たぶん佳奈美ちゃんは一つ目で、透君は二つ目だろう。相性バッチシ。今頃、透君は自殺しようとしているんじゃないかな?」
「笑い事じゃないだろ!」
悟は拓郎の胸倉をつかんだが、拓郎はものともせず、
「そんな焦ってもね、今出来ることは限られている。運転手さんに頑張ってと応援することと、透君に会った時どう相手するのかを考えることだけだ」
「・・・間に合わなかったら・・」
悟の苦しげなつぶやきに、拓郎はニコニコ笑顔で言ってあげた。
「大丈夫。とりあえず、間に合いはするから。鈴森神社には鈴音様がついてる」
そして、拓郎と悟は間に合った。
間に合ったと言っても、かなりギリギリのラインである。
透はもう包丁を持っていて、悟の声にもこちらに顔を見せようとせず、その包丁を徐々に振りあげていっている。
そして、透の前には佳奈美が立ちはだかっていた。
髪は解いてだらしなく垂らし、スーツの上着も着ておらず、ワイシャツの首元のボタンは外されている。
ハイヒールも脱いで裸足の姿はきっちりした所がなく、狂った笑顔があるだけ。
拓郎は正直、がっかりした。
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