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「お、俺はどうしたらいい?」
悟も声をかけてきて、
「悟君は透君の事だけ考えてなさい。ヒオウギ君は佳奈美ちゃんの視界を遮ってくれればいい。隠すのは檜扇の得意技でしょう?アフグさんは寒気を持続させてください。寒気は人を動けなくさせる力があるからね」
拓郎はすばやく指示していく。
「私が黒竹箒を佳奈美ちゃんから引き離す。佳奈美ちゃんからホウキさんが離れたら、アフグさん、それにちこ、ホウキさんの事は頼んだよ」
アフグとちこがうなずいた。
「それじゃ、寒気を感じたら、動いてね」
拓郎はそれだけ言い残すと、佳奈美に向き直る。
いつものニコニコ笑顔からさらにニヤリと口角を引き上げ、獲物を見るような目で佳奈美をねめつけた。
ちこは佳奈美と向かい合った拓郎の姿を見て、それだけで鳥肌が立った。
自分の父親はこれほどまでに気持ちの悪い存在だっただろうか。
「ちこ、大丈夫か?」
アフグが声をかけてくれる。
「お父さんって、本当に前科ないの?」
「ま、まぁ、普段はあのいつもの笑顔で人良さそうだから」
アフグが呆れたようにつぶやいた時、
「佳奈美ちゃん」
拓郎が仕掛ける。
「君はとても美しいよ。意志の強そうな、強情そうなその瞳が何とも魅力的だ」
気味の悪い、甘い口調と甘い言葉。
その甘さが一気に狂気へと変わる。
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