想いよ届け

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「その瞳が涙で濡れた所を想像しただけで、・・・ゾクゾクする」  拓郎が、黒竹箒で狂ってしまっている佳奈美よりも、さらに狂気染みた笑みを浮かべる。  寒気なんてものじゃない。  全身が、それこそ頭のてっぺんから足先まで総毛立つ。  寒気は人の動きを止めると言ったが、こちらまで動きを止めてどうする。 「カワホリさん、ヒオウギさん、今です!」  ちこは頑張った。  引いてしまって動けなさそうなアフグとヒオウギの背を押す。  ヒオウギは佳奈美に向って駆け出した拓郎を追いかけ、アフグは佳奈美に向って蝙蝠扇を扇ぐ。  先ほどの拓郎の言葉に凍りついていた佳奈美も、拓郎とヒオウギが寄ってきたことで逃げようとした。  しかし、蝙蝠扇の冷気に足止めされる。  佳奈美は逃げることをあきらめ、今度は拓郎を迎撃しようとした。  そこにすかさずヒオウギがガラスケースから取り出しておいた檜扇を掲げる。  キラリとした、まばゆく美しい輝きが、佳奈美の顔を覆い隠して佳奈美の視界を遮った。  そして、拓郎が黒竹箒を蹴り飛ばす。  黒竹箒が佳奈美の手から離れて吹き飛んだ。  それに合わせて、佳奈美の体から抜け出るように、空気中からホウキが現れ、黒竹箒と同じように吹き飛ばされる。
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