42人が本棚に入れています
本棚に追加
/124ページ
「その瞳が涙で濡れた所を想像しただけで、・・・ゾクゾクする」
拓郎が、黒竹箒で狂ってしまっている佳奈美よりも、さらに狂気染みた笑みを浮かべる。
寒気なんてものじゃない。
全身が、それこそ頭のてっぺんから足先まで総毛立つ。
寒気は人の動きを止めると言ったが、こちらまで動きを止めてどうする。
「カワホリさん、ヒオウギさん、今です!」
ちこは頑張った。
引いてしまって動けなさそうなアフグとヒオウギの背を押す。
ヒオウギは佳奈美に向って駆け出した拓郎を追いかけ、アフグは佳奈美に向って蝙蝠扇を扇ぐ。
先ほどの拓郎の言葉に凍りついていた佳奈美も、拓郎とヒオウギが寄ってきたことで逃げようとした。
しかし、蝙蝠扇の冷気に足止めされる。
佳奈美は逃げることをあきらめ、今度は拓郎を迎撃しようとした。
そこにすかさずヒオウギがガラスケースから取り出しておいた檜扇を掲げる。
キラリとした、まばゆく美しい輝きが、佳奈美の顔を覆い隠して佳奈美の視界を遮った。
そして、拓郎が黒竹箒を蹴り飛ばす。
黒竹箒が佳奈美の手から離れて吹き飛んだ。
それに合わせて、佳奈美の体から抜け出るように、空気中からホウキが現れ、黒竹箒と同じように吹き飛ばされる。
最初のコメントを投稿しよう!