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憑きものが取れて力を失い倒れそうになった佳奈美を拓郎が支えた。
ーー強くて、怖くて、わがままーー
鈴音の事を言ったアフグの言葉をちこは思い出す。
そしてその言葉と父を重ねた。
はっきり言って、あの父親のようにはなりたくない。
でもアフグのいつも言っている鈴音様のようになりたいと、ちこは思った。
「は、放して・・」
正気を取り戻した佳奈美は自分の格好を恥じ、そして先ほどの拓郎の様子に恐怖して拓郎から離れようとする。
しかし、拓郎はさっきの姿が嘘のようにいつもの人の良さげなニコニコ笑顔を浮かべて、
「貴方は悟君を勝ち組の証にしていたようですね」
普段よりもはるかに丁寧な口調。
人を安心させる柔らかい声。
だけどその言葉は佳奈美の心を揺さぶる。
「自分に自信がありませんでしたか?周りの声が気になりましたか?
ですが、悟君に使われる以上の力を貴方は発揮できる女性だと思いますよ。
もっと自信を持って生きてみたらどうですか?自分に誇りを持って堂々と生きたものが勝ち組みでしょう?」
拓郎の言葉に佳奈美は視線を落とし、ぽつりと謝った。
それを見届けてからちこはアフグに促されて、ホウキの元に駆け寄った。
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