想いよ届け

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      ◆ ーーお前に避けられてた時の方が、もっと、もっとずっと辛かったーー  透はその言葉を聞いたとき、謝罪以外の言葉が見つからず、謝った。  だけど、顔を俯けようとしたのは、自責の念より、嬉しさと小っ恥ずかしさのせいだった。  黒竹箒にはたかれても消えず、だが、蝙蝠扇に冷やされてしまった想いが蘇る。  それでも、それでも自分は・・・  ・・兄貴と一緒に生きていきたい・・  もう一度蹴り上げてこようとした悟の足を抑えて安静にさせる。  今の自分にできるのはこれくらいだった。  そうすると、悟が透の背後を見つめ、透は悟の視線を追った。  そして倒れているホウキを見つける。  つい駆け出しそうになって、怪我をしている悟を思い出し踏みとどまる。 「気になるなら行ってこい。俺は大丈夫だ」  悟は今の一瞬で全てを理解したかのようににやにや笑う。 「ほら、行け。相手が人間じゃなくても、兄ちゃんはお前の味方だ」 「うるさい!」  悟の言葉に背を押されて透はホウキの元に駆け寄った。  そして、倒れているホウキに手を貸そうとしたちこがアフグに止められたのを見て、透もホウキから少し離れて立ち止まる。 「きちんとホウキをね、納得させないとダメなんだよ」  ホウキが意識を取り戻して、体を起こす。  束ねられていないために、彼女の闇を表すかのように乱れ広がっていた黒髪が揺れる。 「あつい・・」  ホウキの声が聞こえる。  小さいが、禍々しい響きを持ったホウキの声。 「あつい・・何でオレが・・オレばかりが・・」  アフグが蝙蝠扇でホウキを扇ぎはじめる。  その風にホウキは顔をあげたが、その視線は定まっていない。  アフグもちこも透も見ておらず、宙に視線を泳がせている。 「お前は普通に生きたかっただけなのにな」 「・・オレは・・普通に生きていたかっただけだ・・普通に・・」  アフグの言葉に誘導されるように、ホウキは言葉を憎しみを混ぜて吐き出す。
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