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「誰にも愛されず、必要とされなかったあの場所で、いつかきっと、あんな村を出て、自分を愛して、必要としてくれる奴を見つけるために、強く、負けないように強く、生きていただけなのに・・」
ホウキはアフグに扇がれながら、ぽろぽろと涙を流した。
「なのに・・あいつらはそれを物の怪付きだと言って・・オレを・・」
アフグはうんうんと頷いて、ホウキの視線を自分の視線に合うようにして、
「でも、もう俺たちがいるだろ」
ホウキはアフグに視線を合わせた。
「全く毎度毎度、誰かに取り憑くたびに荒れるのはやめてほしいんだがな。まぁ、今回は俺も少し荒れたけどさ」
アフグは軽くぼやいてから、ホウキをしっかり見つめ、
「俺にはお前が必要だよ。前にも、たぶん毎回言わされてるんだけど、俺は誰かに使われるためにいるから、年中俺を使ってくれる、必要としてくれるお前が俺には必要だ」
ホウキの頬が徐々に紅潮し、恥ずかしげにうつむいた。
ホウキの長い黒髪が顔の前に流れ、ホウキの顔を少しだけ隠す。
さっきまでまるで闇のようだったのに、今やそんな雰囲気はどこにもなく、普段見られない乙女らしいホウキの姿に、透はドギマギしてしまう。
「ホウキ、」
透がうろたえている間だった。
その合間にアフグがホウキの名前を呼んで、ホウキが上目づかいで目線をアフグに戻す。
「愛しているよ」
先を越された!
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