そして、

2/7

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/124ページ
        夏休みがもう終わる。  透は悟と一緒に鈴森神社に訪れた。 「もう、引っ越しちゃうんだ」  巫女装束のちこがしみじみとつぶやいた。  ホウキが寝っ転がり、アフグがそんなホウキを扇ぐといういつもの様子の長椅子に腰かけると、拓郎がお茶を出してくれる。 「今回は本当にご迷惑おかけしました」  悟がアフグとホウキとちこに向かって頭を下げた。  あえて拓郎の方には見向きもしない。 「そんな畏まらなくっても、俺はヒオウギと再会できたし、鈴森の土地もなくならなかったし」  アフグは軽く笑って言った。  黒竹箒の騒動があってから数日もかからぬうちに、悟の元に会社の社長から連絡があって、この鈴森から手を引くよう言われたらしい。  それと共に佳奈美は本社に早急に帰るよう言われ、怪我をした悟は透の夏休みが終わるまで療養休暇をとることになった。  ちなみに、透は兄がどんな仕事をしているのか全く知らず、鈴森の地の売買の話をしていたと知ったのも、黒竹箒の件の後だった。 「だから、まぁ、気にすんなって」 「そうそう、君たちもあいつに巻き込まれた側なんだから」  それでも畏まっている悟に対してアフグは言い、そしてその話に拓郎が参加してくる。 「あいつって誰だ?」 「あれ?アフグさん気付いてなかった?」  拓郎が前に悟からもらった名刺をアフグとちこに見せる。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加