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その名刺を見たとたんアフグの表情は固まった。ちこも驚きの声を上げて、
「これ、お母さんが社長やってる会社じゃん!」
「・・でも、確か資料には離婚後海外にって・・」
「それ、あいつが直々に作ったんだろうね」
混乱する悟と、話の流れがつかめない透を置いて、拓郎が出来の悪い子どもに対するような溜息をつく。
そしてやはりあのニコニコ笑顔で、
「佳奈美ちゃんを使えば、土地を奪って私を陥れられると思ってんだから、まったく考えが甘いよね。予想以上に大事になって慌てた姿が眼に浮かぶ」
「・・・・」
悟は絶句していた。
だから、代わりに透が問いかける。
「つまり、兄貴は夫婦げんかに巻き込まれたのか?」
「離婚してるから夫婦じゃないよ」
「どちらにせよち・・・」
「痴話喧嘩か!」
透の言葉を代弁してアフグが怒鳴り、ホウキが拓郎を掃き飛ばそうとして、
「いやいや、違いますよ。きっと、透君たちの悩みをね、鈴森神社に解決してもらおうと思ってのことですよ」
それこそ、いやいや、違うだろ。
先の言葉を聞いていなければ、まだ信じる余地もあったが、今さらでは信憑性も皆無だ。
しかし、ホウキは構えた黒竹箒を下ろして、
「ん、そうか」
と、定位置に戻った。
難を逃れた拓郎は、呆れている悟に向き直り、
「ところで、悟君にあいつへの伝言を頼んでもいいかな?」
「伝言?」
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