そして、

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「ああ。私も簡単に鈴森の地を売ってしまう人たちから買い取っておこうと思っていたところでね、君たちの方でまとめてくれて助かったよ。だから・・・」  あのニコニコ笑顔が不気味な雰囲気をまとう。 「君のところに買い取りにいくから、愉しみにしてて」  拓郎と向かいあっている悟はもちろんのこと、透まで背筋に悪寒が走り、ぶるっと震えた。 「って、あいつに伝えてくれるかな?」 「わ、わかった」  不気味な雰囲気は消えたが、悟は拓郎に逆らわず頷いた。  その頷きを確認してから、拓郎はコップを持つ悟の手を見つめる。 「それにしても、指先の絆創膏はなくならないね」  悟の表情が気まずそうにゆがみ、透は思わずにやにや笑ってしまう。  包丁の傷はだいぶ治っているのに、指先の絆創膏は未だ減っていない。  でも、その事実に透はにやにや笑いながら、 「なくなる訳ないよ。だって、兄貴、めちゃくちゃ料理下手くそなんだもん」 「黙れ、透。こっちは怪我人だぞ」 「怪我人だからって、鍋と鍋の蓋の間に指挟んで出血とか、マジないわ」 「黙れって言ってんだろ。それに味はお前より上だ」  調子にのった透の首を悟が腕で締めてくる。  確か包丁で怪我した方の腕だ。  どこが怪我人なんだか。 「そう言えば、透君、料理教室に通いはじめたって言ってたね。でも、悟さんは観てるだけだったんじゃないの?」  透と悟はあの後本当に料理教室に通いはじめた。  悟の方は怪我のため、初めは透の付き添いということで観ているだけだったが。
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