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「いま、鈴の音が聞こえなかったか?」
「そう?私には聞こえなかったけど・・」
「鈴音が見送りに来てくれたんじゃね?」
ちこは小首を傾げ、アフグは笑って言う。
「初めてここに来た時も、鈴の音が聞こえたんだ」
「鈴音に歓迎されていたんだな」
「心配されてたんだろ。だって、こいつ、初めてきた時泣いて・・」
「わ~~~~~~」
透はホウキの声を自分の声でかき消す。
まさか今になってそのネタを振ってくるとは思いもしなかった。
ホウキの声をかき消した後、何事もなかったように透は石段を降りようとして、今度はホウキに掃き飛ばされた。
悟も同様に掃き飛ばされて、石段を落ちるように降りる。
「何すんだよ!」
「餞別というやつだ。ありがたく頂け」
ホウキの即答。
透が腹を立てているのとは対照的に、悟は笑っていた。
「それと・・」
ホウキは石段を全て降りて来ず、高いところから透を見下ろして、
「ありがとう」
ホウキはそう言い捨てるとさっさと石段を上り始めてしまう。
「・・・何が?」
「ホウキはちゃーんと、君の告白を覚えてるってこと」
アフグがにたにた笑って、透の耳元で囁いた。
透が見る見るうちに真っ赤になって、どぎまぎと何も言えなくなると、アフグと悟が爆笑をこらえてクスクス笑った。
笑われて、とりあえず、二人をど突き、去っていくホウキを見上げる。
ホウキは一度も振り返ってくれなかったけど、それが逆に彼女らしくて、悪い気がしなかった。
そして、近くに止めてあったタクシーに乗り込んで、透の鈴森神社での夏休みは終わりを告げる。
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