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次の日も、透は気づけばなぜか鈴森神社に来ていた。
そうなぜか・・・、
きっと、暑いからだ。
今日も軽く三十度を超えて、家で座っているだけで体が汗ばんでくるので、涼みに来たのだ。
決して、あの乱暴ガサツ、奇妙な黒い竹箒を持ったホウキに会いに来たわけではない。
昼を過ぎているからだろう。今日の鈴森神社はにぎやかだった。
町の人々が涼みながら談笑し、子供たちが遊びまわっている。
透は無意識のうちにホウキを探すと、彼女はすぐに見つかった。
彼女は一つの長椅子を一人で占領して、うつぶせに寝ている。
昨日と少しだけ模様が異なる作務衣を着ていて、だらしなく地面に垂らした腕の片方に黒い竹箒が握られている。
そんなだらけ切った彼女の側には、男がいた。
浴衣だろうか、ラフな着物姿で優雅に扇子を動かして彼女に風を送っている。
短い髪は木漏れ日で扇子と同じ紺色に輝き、その扇子と彼の右耳にはホウキと同じ鈴が提げられている。
年の頃は二十代前半ぐらいで若いが、透よりははるかに大人の男。
お揃いで鈴なんかつけて、ホウキとは恋人同士なのだろうか。
「透君!」
自分の名が呼ばれて、声がした方を振り返る。
お守り売り場の会計側に、今日も巫女装束のちこが手を振っている。
「昨日はいきなり帰っちゃうからびっくりしたよ。昼食までに帰るよう言われてたりしたの?」
「・・うん。まぁ、そんなところ」
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