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透はちこの方に寄る。
ちこが昨日同様に馴れ馴れしく聞いてきて、彼は適当にごまかしてから、
「ところで、ホウキの側にいる着物の人って誰?」
「ああ、カワホリ アフグさんだけど、それがどうかしたの?」
「えっ?!いや、・・・別にどうもしないけど」
彼は口ごもり、視線をそらすためにお守りに目を向ける。
結局名前しか聞き出せなかった。
どうやって、アフグという男とホウキの関係を聞き出せばいいのか、透はそればかり考えながら、何の気なしにお守りの一つに手をかける。
「透君も、どれか一つ買ってく?」
「え?」
ちこに声をかけられ、そこで初めて売り場をきちんと見た。
そこに売られているのほぼ全て鈴だった。
二百円程度の安い鈴から、万を超えるような大きい鈴まで、いろいろな種類があるけれど、それはほぼ全て鈴であることに違いはなかった。
「何か御利益あんの?」
「心が落ち着くらしいよ」
「らしいって、はっきりしろよ」
曖昧な答え方をしたちこに透はダメ出しをする。
ちこは困ったような、それでいて年下に指摘されたことに不満そうな表情をして、
「私もよくわからないんだよね。『成績が上がる』とか『怪我をしなくなる』とか『病気にならなくなる』とか、皆いろいろ言ってくるからさ」
「御利益ありすぎて、胡散臭いな」
彼が苦々しく言うと、彼女は軽く笑って、
「お父さんは『心が落ち着くことで集中力とか注意力が高まって、勉強がはかどったり、事故への警戒が高まる』ってもっともらしいこと言ってるけどね。病気に関しては『病は気から』ってことらしいよ」
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